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「地球人」

いよいよこの星はもう駄目だ、と国連が発表したのと宇宙航空開発局が火星基地は完璧な状態になりつつあると発表したのはほぼ同時期だった。人々は次々に宇宙船につめこまれ、火星へと運ばれていった。火星は既に人工的に温暖化させ「地球化」させてあり、多くの細菌、地衣類、植物は繁茂しつつあった。
 はじめ火星から眺める地球に言いしれぬ寂しさを感じていた人間たちはその植物たちに癒しを求め、やがて地球を忘れた。青い星は故郷ではなく、月か、金星のような、天文観測の身近な題材に過ぎない。火星はそれほどに居心地のよい「故郷」になっていたのだ。
 一方火星で人間が生命が育まれる間に、地球は徐々に自浄作用を取り戻し、再び青の惑星として息を吹き返し、やがて人間が活動していた頃には存在していなかった生物が次々と生まれていた。
 いよいよこの星はもう駄目だ、と国連が発表したのと宇宙航空開発局が移住しうる最も有望な星を発表したのはほぼ同時期だった。人々は次々に宇宙船につめこまれ、星へと運ばれていった。
 「火星人」たちはそこへ降りたって仰天した。
 というのも、地球は再び「火星人」とよく似た生き物を生み出していて、しかも彼ら――「地球人」はより優れた技術を持ち、少しの環境汚染も生み出すことなく豊かにこの星に暮らしていたからだ。

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